路線バスが観光客に無視される7つの理由

私の持論というか定期的に言ってるんですが、観光客の行動において、路線バスでの移動はほぼ選択肢に入りません。

「軌道は高いし、バスでいいやん」と安易に言われる方、個人から政治家にまで非常に多いですが、観光振興策としては全く筋違いだと思います。

なぜ、観光客は路線バスを避けるのでしょうか。実際に使ってみると、その理由は決して一つではありません。

 

 

1. 運賃体系がバラバラ

路線バスは、大阪市のように一律料金の都市もあれば、距離制・ゾーン制・整理券方式…など、様々な運賃体系の地域があります。

しかも前払いか後払いかも異なるため、「どこでいくら払えばいいのか」が乗る前に分からないという不安を生みます。

これは外国人観光客に限らず、日本人であっても他県から来た人には見えない壁となります。

 

 

2. 乗降の方法が統一されていない

前乗りか後乗りか。これは鉄道には存在しない、バス特有のルールです。

そしてこのルールが地域によって真逆になっていることも多く、戸惑いの原因になります。

 

なんなら奈良交通のようにバスによって異なる、なんてケースもあります。

例えば、黄色の奈良市内循環バスは、前乗り・後降りですが…

通常の奈良交通のバスは後乗り・前降りになってます。同一会社でぐらい揃えてくれ…

地元では常識でも、外から来た人には直感で判断しにくいのです。

 

 

3. 系統・行先を見ても分からない

バスの前面や側面にある行先表示。

地元民なら「△系統」「〇〇営業所」「〇〇団地」という表記を見ると、一目でどの方面か分かるかもしれません。

しかし、観光客にとっては「どこそれ?」という地名ばかり。同じ行先でも経由地が違うせいで、行きたい方向へ行けないことも。

また、点の案内である行先以外に、線・面の案内である路線図も営業所単位で表示されていたり、同じ名前の停留所の位置が全く違ったり…と、いうのもわかりづらいポイントですね。

 

 

4. 帰りのルートが見えにくい

いざ乗れたとしても、その系統が循環運行や片道運行だったりして、来たルートと同じ道を戻れない場合があります。

「このバスで行けるけど、帰りはどこから乗るの?」という不安が、観光客にはつきまとうんです。

往路の利便性だけで判断しにくいのが、バスの難点です。

 

 

5. 本数が少なく、予定が組みにくい

鉄道に比べて便数が少ないことが多く、1時間に1〜2本というのも珍しくありません。

乗り遅れると次は40分後、ということもあり、旅行のスケジュールが組みにくくなります。

時間的ゆとりがある地元民ならまだしも、タイムパフォーマンスを重視する観光スタイルとは相性が悪く、「それなら割高でもタクシーでいいや」となりがちです。

 

 

6. 車両が同じ色ばかりで識別困難

観光地には複数の系統が存在しますが、バスの見た目が全部同じということも多く、どれがどこに行くのかが一見して分かりにくいことがあります。

電車なら「〇〇線」と明確に識別できるのに、バスでは車両の違いが見えづらい。

その結果、心理的に選びにくくなります。

 

 

7. 地元ICカードのみ対応で全国互換性がない

ICOCAやSuicaなど、全国的な交通系ICカードが使える都市も増えてきましたが、社局によっては未だに地域限定ICカードしか使えないエリアも存在します。

最近だと、広島が手数料負担に耐えれず「モビリーデイズ」なる謎の規格に退行してしまい、現場では大混乱が起きているようです。

 

 

路線バスは悪くない、でも選ばれない

これらの理由は、どれも「観光客の目線で見ると不安になる要素」ばかりです。

逆に言えば、路線バス自体が悪いわけではありません。

目的地にはちゃんと行けるし、料金も安い。

ただ「分かりにくさ」と「不安」のバリアが多すぎるため、観光客からは選ばれにくい存在になっているのです。

 

細かくバリアを潰した「堺シャトル」

一方、堺市の「堺シャトル」は上記問題を一つ一つ丁寧にクリアしています。

1. 運賃体系がバラバラ
→運賃体系は一律230円

3. 系統・行先が見ても分からない
→行先や経由地が明確(行先は堺駅前・堺東駅前の2つだけ)

4. 帰りのルートが見えにくい
→往路、復路共に同じルートを走る

5. 本数が少なく、予定が組みにくい
→運行本数も多いのでリカバリーしやすい(平日10分、土日12分間隔)

6. 車両が同じ色ばかりで識別困難
→バスは専用の金色で他車と差別化

7. 地元ICカードのみ対応で全国互換性がない
→全国の交通系ICカードが使える

 

 

おわりに

観光客にとって選びやすい交通とは、「初見でも使える」ことが第一条件です。

バスという日常的な移動手段を観光でも使えるようにするには、こうした目に見えないバリアをひとつずつ崩していく必要がありますね。

 

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